Story スコッチグレインにまつわるストーリー
Story

スコッチグレインにまつわるストーリー

職人の高い技術、コミュニケーション。
すべてはスコッチグレインがスコッチグレインであるために。

靴職人 | 高山 尚孝

革靴職人として20年以上のキャリアを持つ高山にスコッチグレインの革靴づくりに関するインタビューを実施。長年スコッチグレインの靴をつくり続けている彼だからこそ語れるスコッチグレインの魅力、製造の難しさ、お客様への想いを聞いた。

職人に求められる探求心

革靴づくりを通してこれまでたくさんの失敗をしてきました。
失敗するたびに振り返って探求する、この繰り返しで成長してきたと言っても過言ではありません。若手の職人に教えることで気付くこともたくさんあります。自分が一人前になったかもしれないと思い始めたのもここ最近かもしれないですね。
 
職人気質が強い人たちが多いこの業界、やはりこだわりの強さが大切。私も先輩から数々の技術やこだわりを教えてもらいましたが、やはり技術の習得には時間がかかりました。
 
今でも習得まではある程度の時間は必要ですが、積極的に若手に伝えたり、複数のメンバーで教育にあたるなど職人を育てていく文化も大切にしています。
 
スコッチグレインが大切にしてきたクラフトマンシップ、それは職人から職人へと脈々と受け継がれてきました。
 
その中でもやはりグッドイヤーウェルト製法は言わばスコッチグレインの魂と言える技術のひとつです。
 
「出し縫い」という作業が極めて難しく、その難易度は他の作業とは別格です。朝から晩まで機械に張り付いていないと覚えられないですね。ちょっと覚えてみたいな、というような軽い気持ちでは習得できない最高難易度の技術です。
「出し縫い」をする機械を作った人ですら完璧に理解していないのでは?と思うくらい細かいところが多くて複雑な工程。この技術、本当に本当に難しい……。それにこの機械は目にも止まらぬ速さで動いていて、糸の調整が本当に難しい。糸ですからね、切れちゃうんです。切れてしまったときは大変ですよ……。一つ一つ機械を開けて原因を調査しないといけません。部品も小さく構造も複雑。糸が切れてしまった原因を探るのは大変な時間がかかります。一度機械が止まってしまうと、そのあとの仕事が全くできなくなってしまいます。そのため、機械は必ず修理をしないといけないのですが、ただ修理するだけでなく、切れてしまった原因を探求することもスコッチグレインの革靴職人には求められる要素ですね。
 
縫うことは、機械の設定と手の動かし方を教えたら数日でできるようになります。ただそれは作業ができるというだけ。機械を理解して「スコッチグレインの縫製」の本質的なことを理解するには何年もかかります。辛抱強く探究することが大事。微妙な強弱の設定を間違えただけでも機械が故障してしまう。何度も何度も経験して覚えていくことが本当に大切で一番難しい。

スコッチグレインがスコッチグレインであるために大事なこと

ここまでグッドイヤーウェルト製法に関する話をしてきましたが、スコッチグレインが他のブランドと大きく異なるのは木型です。スコッチグレインの木型はひねってある。これは歩いた時に踵の外側から来て蹴り上げる時につま先から抜けていく構造。木型を平面なところに置くと「カタカタ」となりますが、これが日本人の足や歩き方を熟知した木型であることの証拠。この木型も脈々と受け継がれてきました。
 
グッドイヤーウェルト製法の話に戻りますが私だけにしかできないというものでもありません。革靴の製造工程の中の一つの仕事をそれぞれ3人の職人が理解しています。機械の調整できるメンバーも4人いるので、そのメンバーでシフトを組んでいます。
 
他の職人の話をしましたが、私自身の作業の前後ができる若手を育てています。これは何か気になったときに意見交換しやすいからです。意見交換を繰り返さないと良い製品ができません。この考え方はスコッチグレインの職人みんなが持っている。この考えをスタートからエンドまで複数の職人で貫いている。これがスコッチグレインがスコッチグレインであるために大事なこと。何か気付いた時にはすぐにコミュニケーションをとり意見の出し合いをするようにしています。このコミュニケーションはルールではありません。「コミュニケーションとるように」なんて言われたことないです。作業場がそういう雰囲気。スコッチグレインがスコッチグレインであるために大事な雰囲気です。失敗した場合はその失敗に関して共有したり、より良い製品になるように会話をしてます。前後の行程だけでなく、だいぶ離れた行程から意見を言ってくれる職人もいます。これだけチームワークを意識している現場はスコッチグレインならではかな。

人の気持ち・考えがしっかりしていないと良い靴はつくれない

スコッチグレインの革靴はグッドイヤーウェルト製法でつくられていることもあり、履く人の足の形に馴染んでいきます。さらに靴内部に使用しているスポンジが特殊なもののため、より一層履く人の足に馴染む革靴に仕上がっています。長く愛用していく中で足への馴染み方も感じてもらいたいですね。そこがリピーターさんが選ぶ理由にも繋がっているんだと思います。
でもまずスコッチグレインの靴を選んでもらうためにはショップスタッフの力が大きいですよね。私たち職人がどんなに良い革靴をつくったとしても、その人に合ったものを選んで提案することが大切です。お客様にとって合わない革靴だと結果的にその人の革靴になってくれないです。馴染む・馴染まない、以前の問題ですよね。
 
お客様の足に合った革靴選び、それはとても大事なことなんです。
 
スコッチグレインの革靴は200以上の工程を経て完成します。とてもではないですが、ひとりの力では完成しません。全員が同じ方向を向いて、靴をつくることが大事ですね。もちろん技術や機械も大事ですが、それ以上に人の気持ち・考えがしっかりしていないと良い靴はつくれないと思っています。

一覧に戻る