


靴の美しさを支え、歩く一歩一歩を足元から支える「ソール」。
その性能を追求し続け、世界中のさまざまなシューズに採用されているソールブランドが、Vibram(ヴィブラム)です。
黄色い八角形のロゴで知られるVibramには、山での過酷な経験から始まった、長い探究の歴史があります。
なぜVibramは生まれ、なぜ今も世界中で選ばれ続けているのか。
SCOTCH GRAINの靴を足元から支える、その歴史とテクノロジーをご紹介します。

「Vibram」の名は、創業者であるVitale Bramani(ヴィターレ・ブラマーニ)の名前に由来します。
登山家でもあったブラマーニは、より安全で信頼できる登山靴を目指し、1930年代にラバーソールの開発を始めました。過酷な山岳環境で足元を支えるという目的から生まれたVibramは、その後もソールの素材、デザイン、技術を進化させてきました。
靴底に刻まれた黄色い八角形のロゴは、Vibramを象徴するサイン。
それは単なるブランドマークではなく、ソールづくりの歴史と、足元の性能を追求してきた姿勢を表しています。

Vibramの創業者は登山家でもあり、仲間たちと山に登っていました。
しかし、山岳事故で大切な登山仲間を失った経験から、
登山に対する考え方や、当時の装備にも改善できることがあったのではないかと考えるようになります。
当時の登山靴は、革底に鉄の釘や鋲を打ち込んだものが一般的でした。
しかし、過酷で変化の激しい山岳環境に対応するには、十分とはいえないものでした。
より安全に山を歩くためには、何が必要なのか。
足元をより確かに支えるため、創業者は新たなアウトソールの研究を始めます。
試作と検証を重ね、その探究の末にたどり着いたのが、ラバーによるアウトソールでした。
より確かな足元を追求すること。
そこから、Vibramの歴史が始まります。
Vibramの名が世界の登山史に刻まれた大きな出来事のひとつが、1954年のK2初登頂です。
1954年7月31日、Vibram Carrarmatoソールを搭載したDolomite(ドロミテ)の登山靴を履いたイタリア登山隊が、世界第2位の高峰K2の人類初登頂に成功しました。過酷な遠征では、トレッキング、アプローチ、高所登山など、行程に応じた異なる登山靴が使用されました。
その2年後の1956年5月9日には、日本隊の今西壽雄とギャルツェン・ノルブが、マナスルの人類初登頂を達成。世界各国が8,000m峰へ挑んだこの時代、登山装備にもより高い専門性と信頼性が求められるようになっていきました。
そして1957年、Vibramはイタリア北部・ヴァレーゼ県アルビッツァーテに新工場を開設。山という過酷な環境から始まったソールへの探究は、新たな生産拠点とともに、次の時代へと進んでいきます。

Vibramのソールは、使用する場所や目的に合わせて、DESIGN、COMPOUND、TECHNOLOGYを組み合わせて開発されています。
地面をどのようにとらえるか。
どのような動きを支えるか。
濡れた路面、岩、泥、雪、氷など、どの環境で使われるか。
一足ごとに必要な性能を考え、形、ラバー、技術のバランスを設計する。
それが、Vibramの考えるパフォーマンスです。
DESIGN
地面との関係をつくる、機能のための形。
ソールの凹凸であるラグは、高さ、形、向き、間隔によって役割が変わります。広いラグは安定性を支え、深くエッジのあるラグは泥や砂利などの不安定な路面をとらえます。かかとの形状は下りでのブレーキングを、ラグの間の溝は泥や雪の排出を考えて設計されています。
Vibramにとってデザインとは、見た目だけではなく、グリップ、トラクション、安定性、ブレーキングなどを生み出すための機能設計です。
COMPOUND
使う場所と目的から考える、ラバーの配合。
コンパウンドとは、ソールに使用するラバーの配合です。柔らかさ、弾性、粘性、耐摩耗性などを調整し、濡れた路面でのグリップ、岩への適応性、長距離での耐久性、低温環境への対応など、用途に必要な特性をつくります。
同じデザインのソールでも、使用するコンパウンドが変われば、路面に対する性質も変わります。Vibramはアウトドア、スポーツ、ワーク、ライフスタイルなど、幅広い用途に応じたコンパウンドを展開しています。
TECHNOLOGY
素材と形の性能を、さらに引き出す技術。
ソールを軽くする、トラクションを高める、氷上でのグリップを考える、クッション性を加える。Vibramは、こうした具体的な目的に応じて、ソールの構造や製法、ラグデザインに独自のテクノロジーを組み合わせています。
テクノロジーは単独で存在するものではありません。デザインとコンパウンドに適切に組み込まれることで、そのシューズに必要な性能を生み出します。
Vibramは、ソールの研究・開発・検証を行う技術拠点として、2009年に中国・広州でVibram Technological Center(VTC)を始動しました。
VTCには研究開発機能に加え、さまざまな条件で製品を評価するためのPerformance Test Center(PTC)が設けられています。ソールやコンパウンドの性能を一つの方法だけで判断するのではなく、LAB TEST、IN VIVO TEST、FIELD TESTという異なる視点から検証しています。

LAB TEST
管理された環境で、性能を測る。
機械試験を通じて、ソールやコンパウンドの物理的・機械的な特性を検証します。
材料やソール単体の性質を数値で確認し、目的とする使用環境に必要な品質や性能を満たしているかを評価します。
IN VIVO TEST
実際に人が履き、動きの中で確かめる。
人がシューズを着用し、歩行や動作、足とソールの関係を検証します。
計測データとテスターによる評価を組み合わせ、グリップや動きやすさ、履き心地など、機械試験だけでは捉えにくい要素も確認します。
FIELD TEST
実際の使用環境でも、性能を確かめる。
施設内での検証に加えて、製品が想定するフィールドでテストを行います。
実際の路面や環境における評価、テスターからのフィードバックを通じて、ソールが使用時にどのような性能を発揮するかを確認します。
LAB → IN VIVO → FIELD
測る。履く。フィールドで確かめる。
管理された環境での機械試験、人の動きを通じた検証、そして実際の使用環境での評価。
異なる3つの視点から性能を確かめることが、Vibramのソール開発を支えています。
Vibramのソールが使われているのは、登山靴やアウトドアシューズだけではありません。
山岳環境で培われてきたソールづくりの知識は、スポーツ、ワーク、ライフスタイル、そしてファッションへと活躍の場を広げています。
そのひとつが、革靴のためのラバーソールです。
革靴の端正なシルエットを損なわない、すっきりとした形状。歩行時の安定感や耐久性など、日常で求められる機能。Vibramには、ドレスシューズからカジュアルシューズまで、その靴のデザインや用途に合わせて選べるソールがあります。
クラシックな革靴の佇まいを大切にしながら、足元には現代の生活に応える機能を。
Vibramは、革靴の履き方と楽しみ方に、新しい選択肢を提案します。

SCOTCH GRAINが靴づくりで大切にしているのは、デザインだけではありません。
履いたときの感覚や、歩く時間、そして長く付き合っていくことまで考えながら、一足の靴をつくり上げています。
そして、地面と接する「ソール」もまた、その一足の性格を決める重要なパーツです。
Vibramには、デザイン、コンパウンド、テクノロジーの異なるさまざまなソールがあります。
だからこそ、靴が目指すスタイルや履き心地に合わせて、ふさわしいソールを選ぶことができる。
SCOTCH GRAIN × Vibram。
革靴らしい佇まいと、歩くための性能。
その二つを足元で結ぶ、新しい靴づくりが始まります。