甲革に各パーツの抜型をのせて裁断。革の表情は牛の部位によって異なるため、張りがあってきれいな尻側の革は靴のつま先に使うなど、職人が取り都合を考えながら裁断する。
シワやトラの部分は靴の目立たない部分に使うなど、なるべく革を使いきるよう工夫する。
裁断された甲革のパーツを組み立て縫製。
革が重なる縫いしろ部分は専用の機械で薄くすき、接着後にミシンで縫い合わせる。トゥ、ハネ、ベロなどすべてのパーツを縫製し、アッパーを完成させる。縫製職人が1足1足、丁寧に組み立て、ミシンがけする。
イタリアのタンナーCMC社から仕入れた本底用の革を裁断。ヒロカワ製靴では本底・中底用に年間約50トンの革をCMC社に発注。
本底用の革は、靴のサイズに応じて微妙に異なる厚み2種類を用意。革底の靴には、ほぼこの革が使用されている。
中底にもCMC社の革を使用。インソールなので本底より薄め。ここで作られるすべての靴の中底にこの革が使われる。
こうしたパーツの裁断・加工は外注するのが一般的だが、自社で機械や職人をまかなうことで、品質を維持・向上している。
グッドイヤーウェルト製法に欠かせない「リブ」と呼ばれるパーツを中底に貼る。リブとは、グッドイヤーウェルト製法の要である「ウェルト」を縫い付けるための縫い代になる部分。中底に接着剤を塗った後、リブ専用の機械を使って職人が1足1足貼っていく。
縫製されたアッパーをラストにのせ、中底と合わせてつり込む。これも職人が1足1足つり込んでいく。シワが入ったり歪んだりすることがないよう、ラストにぴったりアッパーをのせるのは熟練職人の腕の見せどころ。靴の顔立ちを決める大事な工程である。
スコッチグレインの靴をよく見ると踵に小さな穴が開いている。その秘密はこの工程。
靴の履き口に張りをもたせるため、ラストにつり込んだ革の踵を底側にぐっと引っ張る。このとき踵に釘を打って固定するため、その跡の穴が残るのだ。
グッドイヤーウェルト製法の要とも言える「ウェルト」を縫い付ける「すくい縫い」の工程。ウェルトとは細く裁断された帯状の革のこと。専用のミシンで甲革+中底に貼ったリブ+ウェルトを合わせて松ヤニを染み込ませた一本の糸でチェーンステッチで縫いあげていく。
グッドイヤーウェルト製法ではクッション材として練りコルクを入れるが、コルクは劣化しやすく弾力性が低下するため、ここでは劣化しにくいEVA製のスポンジを使用。また強度と軽量化のため、土踏まず部分のシャンクにプラスチック製のパーツを使用する。
中物を入れた後に中底に本底を貼り、ウェルトと本底を縫い合わせる。ここで登場するのが専用のグッドイヤーミシンだ。弊社は自社工場に複数のグッドイヤーミシンを揃える稀有なメーカー。写真はイタリアから取り寄せた最新のミシン。上糸と松脂が塗られた下糸で縫製する。
本底のサイドの余分な部分を機械で削り整えた後、ヒールを貼る。
ぴったり中央に位置を決め、職人が1足1足丁寧に貼る。接着剤で貼った後、釘で固定する。こうして完成した靴は仕上げ場で検品し、最後に全体にクリームを塗り込んで仕上げられる。
これらの工程を通して完成される。
一足一足人の手を入れて作るため時間がかかるものの、その分上質なものができあがる。
大切な1足として多くの方に履いていただきたい。